2022年12月30日金曜日

透明なカエルは眠るときに血を隠す (Scientific news)

 今回はScientific newsの記事をご紹介します。

Sleeping glass frogs hide by storing most of their blood in their liver

短く紹介しますので、ぜひ記事をご覧ください。

Duke UniversityのCarlos Taboada らは、葉の裏で生活する透明なカエルに注目しました。そのカエルは透明なのですが、眠るときには薄い緑色になります。カエルの血もヒトと同じく赤いので、薄い緑色というのは、不思議なことです。実際、そのカエルは、起きているときには、赤い血が循環していて、全体に薄いオレンジ色です。なぜ緑色になるのかを、Carlosさんらは、突き止めようとしたのですが、カエルが起きてしまうとすぐにオレンジ色になります。

Carlosさんたちは、カエルを起こさないで内部を調べるのにかなり苦労したそうです。

いろいろ検討した結果、解決する方法として、光音響イメージング(西條研究室)という技術を使いました。

東北大学の西條研究室によると、ナノ秒パルスのレーザーを照射することで、瞬間的に組織が熱膨張を起こし超音波を発生します。光音響イメージングは、この光音響効果を利用したイメージング方法だそうです(西條研究室)。レーザー光はほんの一瞬のため、カエルが目覚めることは防ぐことができたようです。

光音響効果を利用したイメージング法を利用することで、Carlosさんたちは、カエルは血液の色を隠して肝臓に貯めていることを発見しました。

研究者のみなさんが、眠りについたカエルが目覚めることの無いように知恵を絞って「消えた赤血球」を探している様子を想像すると、発見の大きさとは関係なくとてもホッコリします。

肝臓に、色を変えて赤血球を貯める方法は、カエルにとって、葉の裏で眠るときに、血の色で外的に見つかってしまうことを防ぐのに重要かもしれません。緑色の葉の裏にオレンジ色のカエルがいるととても目立ちそうです。

Carlosさんたちは、この発見を透明な魚類や両生類の進化という点で注目しているようですが、人間にとっては、血液の保存技術として有効な技術になるかもしれません。

2022年12月27日火曜日

ウイルスを特定せずに家畜の遺伝子からウイルスを探す - 17年前の研究 -

 前回は動物のゲノムデータからウイルスを探す研究を紹介しました(ゲノムデータからウイルス)。

その次のステップを考えてみます。

その論文では、Blastという、ウイルスの塩基配列データベースに掲載されているウイルスの塩基配列を動物のゲノムデータを単純に比べて塩基配列を探しています。だから、この方法では、「知られているウイルス」しか調べることができません。

でも、もし、動物のゲノムデータや遺伝子データからウイルスを探すとしたら、できれば、「これまでに知られていないけれども、もしかしから危険なウイルスを探したい」と研究者なら考えるはずです。そのようなウイルスが偶然でも発見されていれば、感染拡大に備えることができます。

そこで、必要になるのが「ウイルス種とは関係なくウイルスを探す」技術です。

なんかすごく突飛な技術のように思われるかもしれませんが、実現しています。自慢ですみませんが、私が論文を書きました(ブログの著者を明かしてしまいました)。

Endoh, Daiji, et al. "Species-independent detection of RNA virus by representational difference analysis using non-ribosomal hexanucleotides for reverse transcription." Nucleic acids research 33.6 (2005): e65-e65.

この研究では、「〇〇ではないDNAを増幅するPCR法(サブトラクションPCR法)」を使ってウイルスをPCRで増やしています。つまり、動物ではない塩基配列を探したらウイルスなはず、という発想で論文を作りました。ただし、動物全体のDNAではうまく行かないかもしれないので、RNAウイルスに限定して、動物のRNAをリボゾームRNAという最も一般的なRNAに限定しました。

そしたら、6塩基のパターンで、ウイルスの特徴を見つけることができました。実は逆で、動物のリボゾームRNAが特徴的で、ウイルスにはそのような特徴が無いことがわかったのです。図のAがリボゾームRNA、Cがウイルスです。横軸は、リボゾームRNAに存在している6塩基のパターンを出現頻度順に並べたもので、縦軸はその頻度を示しています。なんと、リボゾームの配列を6塩基に分けるとほとんどが96種類の6塩基で作られていて、ウイルスはそのようなことがありませんでした。

Endoh, Daiji, et al. "Species-independent detection of RNA virus by representational difference analysis using non-ribosomal hexanucleotides for reverse transcription." Nucleic acids research 33.6 (2005): e65-e65.

だから、リボゾームRNAではないRNAを探したら、ウイルスがきれいに出てきたのです。ウイルスに感染した細胞から、家畜の遺伝子ではないRNAを選び出したのですが、結果的にウイルスの断片が増幅されています。つまり、ウイルスを探すのではなく家畜の遺伝子以外を探したらウイルスを取ることができた、のです。

Endoh, Daiji, et al. "Species-independent detection of RNA virus by representational difference analysis using non-ribosomal hexanucleotides for reverse transcription." Nucleic acids research 33.6 (2005): e65-e65.


もし、この技術をもっと工夫して、動物のゲノムに使うことができれば....

これまでに知られていないけれども、もしかしから危険なウイルスを探す」ことができるかもしれません。

ちょうど、それに使えそうな技術も開発しているので、これから挑戦してみようと思います。

キーワードは 「DNAはコンピュータだ」「たくさんの文字から見えない特徴を探す」と「人工知能」です。

2022年12月25日日曜日

ゲノムデータベースから隠れたウイルスを探し出す

 Bovo, Samuele, et al. "Mining livestock genome datasets for an unconventional characterization of animal DNA viromes." Genomics 114.2 (2022): 110312.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S088875432200057X

次世代シーケンサーでは、ゲノムを小さなフラグメントに分けて塩基配列を決定します(https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/next-generation-sequencing-introduction-apb.asp)。ゲノム全体の塩基配列は、100塩基程度のこのフラグメントの塩基配列(Read)を連結することで予測されます(https://genebay.co.jp/de-novo/)。連結されて作成されたゲノム配列からは、これらの動物の遺伝的な疾病や祖先などの情報が得られます。家畜の研究では、研究者は疾病に関連する遺伝子を探すために多数の全ゲノム解析を続けています。研究者は、疾病を決定づける証拠として、ReadデータをWGSという名称で残し、それをGenBankなどの公共データベースでストックして全世界の研究者が利用できるようにしています。

そのため、家畜の疾病遺伝子の研究は、WGSを参照して新たな「遺伝子と疾病の関係」が探索されます。結果的に、WGSデータベースには大量のデータが蓄積されています。Samuele Bovoらのグループは、その大量のWGSから、家畜のゲノムを調べている際に紛れ込んだウイルスの情報を探し出しました。彼らは牛、豚、鶏および兎の1471 のWGSデータセット から367 種類の ウイルスを探し出しました。それらのほとんどは家畜に対して無害であるウイルスでしたが、いくつかは家畜および人間に流行する可能性のある危険なウイルスでした。

このような研究は、家畜のゲノムを調べるWGSから落ち穂拾いのように病原体の情報を集める研究ですが、家畜の病原体全体を知る上で、有効で重要なアプローチになることが示唆されます。

ただ、現時点では、Samuele Bovoらはこれまでに病原体として知られているウイルスしかWGSの中から発見することができません。いつか、人工知能的にウイルス配列を調べることができたら、WGSから新種のウイルスが発見されるかもしれません。